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2026.6.05

地域包括ケアから地域共生社会へ、スマートシティの青写真(3)

国のDXと地域が整備するICT

 

守屋 潔

プロフィール

響働ICT合同会社代表。名寄市役所と名寄市立総合病院(北海道)の職員として地域包括ケアICTネットワーク構築運用に携わる。現在は全国の地域連携ICTネットワークの立ち上げ支援を行っている。総務省「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」DXアドバイザー、全国自治体病院DXアドバイザー。

 

要旨

1回目(4/15掲載)において、地域の健康福祉分野におけるICTネットワークを自治体が主体となって構築すべきと述べた。今回は具体的なプロジェクトの作り方として高齢者介護(在宅医療介護連携)のICT導入について紹介する。ポイントは医師を中心とするトップダウン型ではなくケアマネジャー、地域包括支援センター職員を中心としたボトムアップ型のプロジェクトを作り事務局役を自治体が担うことである。

◯地域が元気になる「使われるICT」の作り方

在宅医療介護連携を普及促進するためにICTが有効ということは国や有識者から以前から指摘されており、何年か前から医師会が全国各々にSNS型のICT(LINEのようなもの)を採用して多数導入はされている。しかしながら効果をあげているかといえば、一部の施設や医師しか使っていない、介護現場の満足度が低い、などの評価の地域が多いのが実情である。その原因は地域の全施設(医療、介護、行政)が参加していないことにある。ネットワークは全員参加でなければ機能はしない。たとえば介護の側から見てA医師は使うけれどB医師は使っていない、C医師は別なメーカーのツールを使っている、などまちまちだと介護事業所側にとってルーティンワークにICTを組み込むことができない。連携手段には、電話、紙/FAX、対面があり、ICTは4番目の手段となるが、各々を組み合わせることで実務を行なっているからである。

それでは地域のみんなが使えるICTはどうやって作ったらよいのか?

大事なポイントを【図1】に示す。

図1 地域が元気になる連携ICTのつくりかた

 

1)医師とそれ以外の職種ではレイヤーが異なる

これまで在宅医療介護連携の議論は市町村から医師会に業務委託するケースが多かった。そうなるとICTネットワークについても医師の視点が中心でツール選定や運用が決められることになる。ところで、連携のパターンには以下の4種類がある。

①医師-医師

②医療(医師、病院)-地域・介護

③介護-介護

④市町村-介護、地域支援者

(訪問看護は介護に、地域には薬局、歯科、デイケア/訪問リハビリ施設を含む)

このうち①(医師-医師)と②③④はレイヤー(必要な情報)が異なっているので分けて取り組むことが肝要である。①は国の医療DXの動向、地域医療連携ネットワークとの関係が重要なので医師会、医師を中心として検討すべきテーマとなる。一方、②③④は市町村が主体となって整備することができる。

 

2)トップダウン型ではなくボトムアップ型で

医師にとって必要なことは医学的判断に必要な情報が中心となる。重要なことはリスク管理であるので「患者の身体上の変化」が関心事である。一方②③④になると世界が変わる。地域包括支援センター、ケアマネジャーや介護、地域の医療職(薬局、訪問歯科、訪問看護、リハビリなど)が関わる在宅で重要なのは「生活情報」である。

  • 最近食欲が落ちた
  • 夜間不穏が増えた
  • 独居でゴミ出しが難しい
  • 家族介護が限界に近い
  • デイサービスを休みがち
  • 服薬管理が不安定

こうした情報は医学的には小さく見えても、在宅生活では極めて重要になる。彼らにとっては「利用者の生活上の変化」が関心事である。したがって医師が起点となるネットワークの場合はどうしてもお互いに欲しい情報(連携)に差異が生じることになる。

図2 ボトムアップ型で情報を集める

 

【図2】はICTシステムベンダーがシステム利用者から得たアンケート結果である。活発に活用されているネットワークほど情報を発信する職種は介護側からが圧倒的に多く医師が発信するケースは稀である。私がシステム運用管理をしていた名寄市のシステムにおいてはさらに訪問看護、通所介護からの投稿量が顕著であった。また医療側は病院連携室と看護師からの投稿が多く、やはり医師からの投稿は少なかった。したがってICTの普及は医師起点ではなく在宅現場からの情報発信を起点とすることが成功の秘訣となる。地域で日常的に使われるから医師も使うのである。【図3】

図3 医師起点から介護起点へ

 

3)国のDXと地域が整備するICTをひとつのプロジェクトと考える

現在、国は医療DX、介護DX(介護情報基盤)の整備を進めている。前回詳述したとおり国が集約、共有するのはストック情報であってフローの情報の共有の仕組みづくりは地域に任されている。しかし「国のDX」と「地域ICT」は別々に議論されることが多い。これは本来、両者は一体で考えるべきである。

ここで重要になるのが、自治体の役割である。

これまで地域ICTは、医師会主導型が多かった。しかし今後は、自治体が主体となる意味が大きくなる。

なぜなら、地域共生社会は医療介護だけでは完結しないからである。

地域で本当に必要なのは、

  • 独居高齢者情報
  • 災害時要支援
  • 配食サービス
  • 見守り
  • 民生委員
  • 買い物支援
  • 移動支援

といった「生活インフラ情報」である。

国のDX情報だけでは実務の連携においては足らない。

国のDXと地域の支援者同士をつなぐ「生活情報基盤」を整備する、この両輪が必要になる。

 

4)市のスマートシティ、5)地域での顔のみえる関係づくり については次回詳述する。