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2026.7.09

人口減少時代の公共施設マネジメント ―公認会計士が答える 実務Q&A(全3/3回)―

執筆者

渡邊 靖雄(わたなべ・やすお)/公認会計士

公会計と公共施設マネジメントを接続する公認会計士。

 

第3回 官民連携・公会計・人材・広域連携 ―「自前主義」を超える

最終回は、一つの自治体・一つの組織で抱え込む「自前主義」を超えていくための論点を取り上げます。官民連携、地方公会計の活用、人材、そして自治体間の連携です。

 

■ 官民連携(PPP/PFI)

Q 知識や実績の乏しい自治体は、PPP/PFIをどこから始めればよいですか。

A まず国が示す情報から学ぶのが入りやすいです。内閣府がPPP/PFI推進アクションプランやガイドライン、地方公共団体向けマニュアルを示し、PPP/PFI推進室には相談窓口もあります。総務省が示す地方公会計や施設マネジメントの考え方も足がかりになります。そのうえで知識を庁内だけで抱え込まず、官民連携に精通した中立な専門家の支援を得ながら、規模の小さい案件から実践して経験を蓄積していくのが現実的です。導入が実現に至らない背景には、①事業規模が小さく民間の採算が合いにくい、②行政側に事業組成のノウハウ・体制が不足、③民間参入への住民の警戒、といった障壁があり、専門家の起用とメリットの具体的な提示で克服します。

Q サウンディング調査は、どう実施・活用すればよいですか。

A 最も重要なのは、「何を知りたいのか、結果を何の判断に使うのか」という目的をあらかじめ明確にしておくことです。目的が曖昧なまま形だけ実施すると、意見は集まっても活用につながりません。得られた提案やコスト感は事業の進め方や条件の見直しに反映し、民間の参入意欲が乏しいという結果なら、その事業手法自体が適切でない可能性を示すものとして受け止め、別の手法を検討する材料とします。あわせて、調査に参加した特定の事業者が後の事業者選定で有利にならないよう公平性に配慮します。

Q 複合施設にPFI等を導入する際の注意点は何ですか。

A 複数機能を一棟に集約すると設備が高度化・大規模化し、将来の維持更新コストが膨らみやすく、それを長期契約で抱え込むことになります。用途ごとに利用者や管理のあり方が異なるため、要求水準や役割分担も複雑になります。床面積の縮減という見かけの効果だけで判断せず、ライフサイクルコスト全体で慎重に見極めることが重要です。なお、VFM評価の精度担保や要求水準書の履行確認、個別法の制約がある施設へのスキーム適合といった高度に専門的な論点は、PFI実務に精通した専門家に確認するのが適切です。自治体に求められるのは、各分野を自ら実務することではなく、専門家の提案の妥当性を評価し意思決定につなげることです。

 

■ 地方公会計の活用

Q 地方公会計を公共施設マネジメントにどう活用すればよいですか。なぜ活用が進まないのでしょうか。

A 施設ごとのコストや資産の老朽化状況を「見える化」できる地方公会計は、人口減少が加速して無理が生じる前の、余裕のあるタイミングでの早めの対策の判断材料として有効です。活用が進まない理由は二つあり、一つは公会計そのものを使いこなせていない技術・体制面の問題(財務書類の作成が目的化しやすく、施設別セグメント分析に落とし込める職員が少ない)、いま一つは分析結果を実際の縮減に移す段階での住民・議会の反発や首長の票への影響といった政治的背景です。一度も活用したことがない団体は、まずすでに作成している財務書類を施設別・事業別のセグメント分析に落とし込み、コストや老朽化状況を見える化することから始めるのが取り組みやすいでしょう。その際、コスト情報だけでなく収入や公共サービスの便益もあわせて捉えることが重要です。

 

■ 人材育成・外部専門家の活用

Q 不動産・契約・合意形成などの総合的ノウハウを持つ職員を、どう育てればよいですか。

A その方向性こそ見直すべきかもしれません。職員数が減り一人当たりの業務量が増えるなか、専門ノウハウをすべて庁内で内製化するのは現実的ではありません。これらの専門分野はその都度、中立な外部の専門家を活用すればよく、行政に求められるのは、むしろ専門家を使いこなし最終的な判断を下せる職員を育てることです。各分野を自ら実務できる必要はなく、専門家の提案や説明の妥当性を評価し、論点を整理して意思決定につなげられる職員こそが重要です。

Q 外部専門家とは、どのような関わり方が効果的ですか。

A 主に三つの形態があり、①業務委託契約は行政が主導しやすい反面、対価を払う相手という外形で中立性を対外的に主張しにくい、②第三者委員会は公平性・透明性が高く判断の正当性を示しやすい反面、合議のため機動的な意思決定はしづらい、③連携協定は継続的な関係を築きやすい反面、個別業務の責任範囲が曖昧になりやすい、という特徴があります。統合・廃止の判断そのものは第三者委員会、技術的な調査は委託契約、というように場面に応じて使い分けるのが効果的です。専門家の独立性や利益相反を確認したうえで、住民説明の矢面には専門家が立ち、行政は意向把握や調整に徹する役割分担が有効です。

 

■ 土木インフラ・広域連携

Q 公共建築物だけでなく、土木インフラ(道路・水道管路等)も縮減対象に含めるべきですか。

A 含めたほうが望ましいと考えます。たとえば水道では、国が示す経営基盤強化の方向性からすると、いきなり給水区域を縮小するのではなく、まず経費節減や料金の適正化など経営努力を尽くすことが前提です。そのうえで、なお赤字構造が解消せず持続可能性が確保できない場合に、施設のダウンサイジングや給水区域の見直しを検討します。直近では、北海道北見市が人口減少と老朽化を背景に水道の給水区域の縮小に踏み切っており、参考になります。給水区域の縮小には生存権が絡み住民への説明は難航しますが、運搬給水や個別配水、転居費用の補助といった代替案を提供しながら、外部の第三者を交えた説明の場を設け、根気強く理解を得ていくほかありません。縮減が必要となる背景は結局、人口減少です。人口減少は財源(カネ)の不足だけでなく、点検・更新を担う技術職員(ヒト)の確保難にも直結します。

Q 近隣自治体との広域連携や施設の合築は、どう進めればよいですか。

A 各自治体が完全に横並びで進めようとすると役割やコストを押し付け合う形になり前に進みにくいため、中心的役割を担う自治体が、短期的には人的・財政的コストを引き受けてでも主導的に調整し、協議会など合意形成の場を設けて費用負担のルールや役割分担を早い段階で文書化しておくことが有効です。合築を検討する際は、双方の対象施設が更新時期を迎えていること、両自治体の対象エリアが地理的に近接していること、という二つの前提が揃っているかが出発点になります。具体例として、北海道の名寄市立総合病院と士別市立病院が地域医療連携推進法人「上川北部医療連携推進機構」を設立し、名寄市が救急・急性期、士別市が慢性期を担う形で機能分担を進めています。なお学校(とくに小中学校)は立地が地域に強く結びつき市町村単独での広域化に限界があるため、市町村間連携を前提に都道府県が広域調整・支援を担う枠組みや、組合立など複数市町村による共同設置も選択肢です。

 

本コラムは、公共施設マネジメントに関する勉強会において、自治体実務担当者から寄せられた事前質問への回答をもとに、Q&A形式に再構成したものです。