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2026.9.11

「公共施設のZEB化と防災機能強化」について(1回目/全3回)

株式会社IES

https://www.ies-japan.co.jp/

シニアコンサルタント 栗木恭二

Mail:kuriki@ies-japan.co.jp

 

「公共施設のZEB化と防災機能強化」について(1回目)

 

100年に一度の大災害が、毎年の如く日本列島の至るとこで発生。手遅れになる前に何をするから、既に手遅れになった今をどう生きるか」を考えなくてならない時代となった。

 

今回から3回に分けて、「公共施設のZEB化と防災機能を別々に考えるのではなく、一体的に考える」という視点で、特に災害時における避難所に焦点を当てて、具体的な対策提案を行う。

 

7月28日熊本での大地震、気温39.1度観測史上最高気温を計測した中でのエアコンのない避難所(体育館等)での生活は、皆さんはイメージできるだろうか?

熊本県での小中学校の体育館におけるエアコンの設置率は20.9%(全国平均約30%)にとどまっている。皆さんの自治体では如何ですか? 平均で良しとは思わないでください。

災害が発生した際、自治体には住民の安全を確保し、避難生活を支える役割があります。

家を失い、家族を失い、心身ともに疲れ切った市民の命を守るべき避難所をもっと快適に心休まる場所にするために、優先的に環境点検・評価・予算化・設備改善を考えなくてはなりません。

 

「公共施設のZEB化と防災機能を別々に考えるのではなく、一体的に考える」視点で問いかけます。

第1部:避難所の防災対策は地震や水害だけではない?――見落とされがちな「夏の暑さ」という課題

第2部:空調設備だけでは限界が?――「建物に入ってくる熱」を抑えるという発想の転換

第3部:避難所×ZEB化を見据えた、既存施設を活用したこれからの防災・省エネ戦略

 

第1部:避難所の防災対策は地震や水害だけではない?――見落とされがちな「夏の暑さ」という課題

  1. 災害対応の多様化と「気候変動」という新たな脅威

日本国内において、自然災害への備えは自治体経営および地域行政の最優先課題の一つです。地震や津波、近年の線状降水帯による激しい豪雨や河川の氾濫など、私たちは常に多様なリスクに直面しています。これに対し、多くの自治体では耐震改修の推進、防災備蓄品の拡充、詳細なハザードマップの策定と住民周知、そして避難行動要支援者支援計画の策定など、ハード・ソフト両面からの防災・減災対策を重ねてこられました。

しかし、地球温暖化の進行に伴う気候変動は、これまでの想定を超える「猛暑・酷暑」を常態化させています。夏場や残暑が厳しさを増す時期に大規模災害が発生した場合、私たちは従来の防災計画では見落とされがちだった、極めてシビアな現実に向き合わなければなりません。

それが、「災害時に避難する場所そのものが、耐え難いほどの高温空間になっている」という問題です。

 

  1. 指定避難所を襲う「夏場の高温化」の現実

多くの自治体において、指定避難所の大部分を占めているのは、学校の体育館、地域の公民館、武道場、あるいは古い構造を持つ低層の公共施設です。これらの施設に共通しているのは、広大な空間を効率よく覆うために「大屋根構造」を採用している点であり、多くの場合、断熱性能や空調設備の整備が十分に行われていません。

災害発生後、避難所へと身を寄せた住民を待っているのは、窓を締め切った状態(あるいは換気が十分にできない状況)での猛烈な暑さです。特に体育館の内部は、屋根から伝わる輻射熱と室内の熱のこもりによって、外気温を大きく上回る「サウナ状態」と化すことが珍しくありません。

 

  1. 「暑さ」が引き起こす深刻な健康被害と避難所運営の破綻

避難所における過酷な暑さは、単に「過ごしにくい」「快適性が損なわれる」という次元の話ではありません。それは住民の生存と健康に直結する深刻なリスクです。

  • 熱中症の多発: 高齢者や乳幼児、基礎疾患を持つ方にとって、高温環境下での生活は短時間であっても熱中症の発症リスクを跳ね上げます。
  • 持病の悪化と二次健康被害: 睡眠不足や脱水症状は、高血圧や心疾患などの持病を悪化させ、いわゆる「災害関連死」を引き起こす最大の要因の一つとなります。
  • 避難生活の早期離脱と二次災害: 劣悪な暑熱環境に耐えきれず、安全が十分に確保されていない自宅や車中泊に戻ってしまう住民が続出することで、さらなる二次災害や健康悪化を招くおそれがあります。
  • 運営スタッフの負担増大: 避難所を運営する自治体職員や地域住民自身も過酷な暑さに晒されるため、判断力の低下や体調不良者が続出し、避難所運営そのものが機能不全に陥るリスクが高まります。

「住民の命と健康を守る」ための避難所が、皮肉にも健康を脅かす空間になってしまう――。この矛盾を解消することこそ、これからの防災行政に求められる急務の課題なのです。

 

事例①:体育館等でのWBGT熱中症指数の改善

 

事例②:保育園での熱中症対策(遊具のやけど防止)

熱くて触れない遊具 → 園児が楽しんでいます