東日本大震災を教訓に 複合施設新給食センター建設へ
東日本大震災を教訓に 複合施設新給食センター建設へ
前奈良県三郷町長 森 宏範
始めに
令和8年熊本地震によりお亡くなりになられた皆様に、慎んで哀悼の意を表します
と共に被災されたすべての皆様に心よりお見舞い申し上げます。
今なお不自由な生活を送られている方々には、一日も早く安全と平穏な日常が戻りますよう、心よりお祈り申し上げます。
東日本大震災を教訓に!
平成23年3月11日14時46分頃、発生した東日本大震災は、死者・行方不明者約2万人という未曽有の大災害となりました。
その半年後、友好都市(長野県安曇野市、埼玉県三郷市、奈良県三郷町)防災会議を埼玉県三郷市で終えた翌日、3人(渡瀬教育総務課長、酒田企画財政課長、私)は、早朝、大宮から新幹線に乗り気仙沼に向かいました。目的は、復興の状況、避難所の運営についてです。気仙沼に到着したのは、もう昼前であったと記憶しております。
気仙沼でレンタカーを借り気仙沼の街へ、そこで私たちが目にしたのは、ガレキの山、山、山、復興とは程遠い光景でした。「こんな大きな船が」そこに打ち上げらえていたのはタンカーのような大きな船、津波の本当の恐ろしさを知る事となります。
さて、本題の避難所については、アポ無しでちょっと高台にある大きな体育館に飛び込んでみました。
田中館長との衝撃的な出会いと教え
「ようこそ来ていただきました!」田中館長(女性)の弾む声に私たちは「アポなし、飛込みなのに」違和感を覚えます。後に考えると行政に携わる者にどうしても伝えたいものがあったのでしょう。
館長のお話
・震災し津波が押し寄せてきた時、津波に飲み込まれていく姿を見ているにもかかわらず、助けられなっかた事を非常に悔やんでいる
・3.11の夜、電気のない体育館は、暗闇と寒さで避難者は不安で不安でいっぱいであった
・ライフラインが止まり、下水が使えなくなり常にトイレは長蛇の列となった
・支援物資は意外と早く届いた
・数日間で避難所・避難者間の暗黙のルール(助け合い)が出来上がる
・震災直後は何百人もの方が避難されていたが、今では数十人
田中館長からのお願い
もし三郷町で何か建てられるのであれば
・必ず電源の確保を
・仮設トイレを増設できる状況に
・食料は意外と早く届く、水の確保を
・建物内もしくは近くに非常用食料、毛布等の備蓄を
いろいろ親身に教えて頂き、本当に伺って良かったとの思いの中、体育館をあとにしました。
「今日はどこに行ってきたんですか?」レンタカーを返却するときに聞かれ、
「体育館の田中館長に避難所の苦労話や私達のためになる話を聞いてきました」と答えると
「実は館長もご主人を津波で亡くされているのです」私の心に走った衝撃は、図り知れないものとなったことを今でも忘れられません。その後の私の行動に田中館長の影響があったのは言うまでもありません。
田中館長の教えを実行に
三郷町は、人口約2万3千人(当時)、面積は8.97平方キロメートルと大変小さな町でありますが、周囲17キロの内、4キロが大和川と接するため度々水害に悩まされ、多い時には年に2~3回避難所を開設しなければなりません。
また、平成22年に頓挫した新給食センターを建設することが急務となっていました。文科省の学校給食衛生管理基準で、調理場はドライシステムを導入するよう努めることとされたからです。
気仙沼から帰ってから田中館長の言葉が頭から離れません。
「もし三郷町で何か建てられるのであれば!」。
この状況下で新給食センターを建てることを決断するのに時間はかかりませんでした。そして 子供たちのために! 災害が起こった時のために! 動き出しました。
新給食センター建設へ
新給食センターコンセプト
☆安心・安全でおいしい学校給食を提供すること
*衛生的な厨房運営の方法であるドライシステムの採用を
➩空調設備により温湿度管理を徹底、ドライシステムを採用
*給食センター運営に当たっての明確な指針を
➩1日3食のうちの1食である学校給食は、健康と命を守るための大事な1食であることを念頭に入れながら、きめ細やかな栄養管理を行い子供たちに安心・安全でおいしい給食を提供する
*食物アレルギーの対応
➩専用の調理室を確保
*地産地消の推進を
➩農水省も推奨している地産地消を強力推進
☆食育を推進すること
*調理員さんが給食を作ってくれている姿を見学できないか
➩2階から作業を見学できるようにした
*食育の一環として親子料理教室等、できないか
➩子供だけでなく、大人もできる料理教室を定期的に開催している
*食・農教育の一環として、教育ファームの実践はできないか
➩農業委員さんの協力のもと、玉ねぎを小学生が植え収穫する教育ファームの実践となった また、その玉ねぎは、給食に使われている
☆環境への配慮を行うこと
*CO2排出の少ないエネルギー源を主とすること
➩調査の結果、都市ガスと決定
*自律分散型のエネルギーを確保すること
➩太陽光発電と蓄電池によりCO2削減、電気の購入量減となった
☆防災拠点としての機能を持った複合施設を整備すること
*いかなる場合も電源の確保を
➩太陽光・蓄電池に加え、お湯と電気を作る停電対応型ガスコジェネレーションシステムを導入、また、阪神大震災の際、ライフラインで一番強かったのがガスの中圧管であったということを学んだ為
*防災拠点の機能とは
➩給食センターであることから炊き出しの拠点、町役場が大和川の横にあるため、川が氾濫し、役場が被災した時のために、センターを第2次災害対策本部にできるよう防災無線の発信機を整備
、センターの2階は避難所を兼ねた会議室と、親子料理教室などで調理室があり、平常時は食育の
場として活用しているが、調理台は可動式になっており、非常時には、移動させ、避難所としての
スペースを確保することによって、126名を収容することが可能となっている、1階には和室があ
り、平常時は給食センター職員の休憩室として使用し、非常時には、19名を収容できる福祉避難
所として使用する
*複合施設として充実した整備を
➩上記2つに加え、三郷町の避難者が3日間水を飲める量である60トンの耐震性貯水槽を設
置、マンホールトイレを5か所増設できることとした
新給食センターオープン
平成27年9月1日3か月の試験運転を経てオープンすることができました。土地の取得や、進入路の建設に難航したものの住民・議会のご理解を得るとともに職員の頑張りが大きかったと痛感しています。そして、何よりここまで導いていただいた田中館長には、感謝の念しかありません。
ここに当時、国際環境経済研究所理事 東京大学客員准教授であられた松本真由美先生に給食センターを取り上げて頂いた文章があります。以下URL[先進エネルギー自治体(5)]よりご一読ください。
ご褒美を頂く
ジャパン・レジリエンス・アワード強靭化大賞の先進エネルギー自治体大賞にノミネートされることとなりました。
先進エネルギー自治体大賞は、地域の特性を活かしたエネルギーの利活用により地域の活性化に取り組む先進的な自治体を表彰することを目的に2016年に創設された賞です。
2016年2月2日に開催された「先進エネルギー自治体サミット」において、ファイナリストの18団体の市町村長・担当者による最終プレゼンテーションが行われた結果、惜しくも優良賞に留まりましたが、イイノホールでの発表は、一生忘れられない自分へのご褒美となりました。
(以上)
-参考記事-
松本真由美先生 奈良県三郷町 給食センターをコージェネで災害拠点に
先進エネルギー自治体(5) – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute