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2026.6.09

地域包括ケアから地域共生社会へ、スマートシティの青写真(4)

国のDXと地域が整備するICT

守屋 潔

要旨

地域の支援者同士をつなぐ連携ICTシステム構築で重要なことは「データ所有者は誰か」ということである。住民データの所有者は企業ではなく住民であり、住民を代表する自治体でなければならない。自治体がデータ主権をもつデータベース、ネットワークであれば例えば在宅医療から出発したとしても福祉、こども、防災など自治体の多機関協働全般で活用できる。これこそがスマートシティの情報インフラとなるためネットワークは自治体主導で構築すべきである。

◯地域が元気になる「使われるICT」の作り方

(4)スマートシティの情報インフラとして市が責任主体として整備する

市町村から在宅医療介護連携推進事業を委託した医師会が中心となって全国で在宅医療を目的とした多職種連携SNSツールが導入されている。しかしその稼働状況は芳しくない地域が多い。理由の一つは一部の診療所を中心とするグループに留まっており、地域の全介護事業所、病院、そして自治体も参加していないことがあげられることは前回詳述した。2つめの理由は使用頻度が少ないことである。介護現場(とくにケアマネジャー)にとっては訪問診療による在宅医療の必要性はもちろんあるが、現実にはそれだけでなく病院への通院、入退院調整などの医療介護連携業務全般や介護事業所との連携、行政との連絡など多くの日常業務があり、それらにはICTが使われていないことが多い。使用頻度が少なければルーティンワークに落とし込むことができないためやがて使われなくなっていく。

そこで自治体を運用主体として、在宅医療だけでなく自治体の多機関協働業務全般で使えるICTを整備する。地域の公式ネットワークという位置付けとすれば地域の全施設が参加するようになり、参加施設や参加支援者が増えると多目的用途で使われるようになり、ICTが各々の支援者のルーティンワーク、電話、紙、対面に続く4番目の連携手段となる。またその用途も現場からのニーズでどんどん広がっていくものである。こうして平時において地域の支援者同士がつながる仕組みができると、いざ有事(災害時など)のときに実際に稼働する連携手段となる。将来的には隣接する自治体と広域行政連携が行えることも想定しておく必要がある。このようにボトムアップから始めてさまざまな事業で住民データを活用していくためには、民間企業のクラウドサービスを利用するのではなく、自治体が住民データを管理できるシステムを選択すべきである。

【図1】

(5)ICTは道具、顔の見える関係づくりがゴール

全国で多職種連携SNSツールが多数導入されているがその稼働状況が芳しくない、3番目の理由はICTツールのみ導入して「顔の見える関係づくり」を伴っていないことである。一般にトップダウンでICT/DXツールを導入促進したとしても、使う側に切実な動機(モチベーション)がなければ誰も使わないものである。多忙で自施設の管理PCに報告書を登録しなければいけない日常のなかで、また新たな業務(新しいICT/DXツール)が増えることは負担と感じる支援者が多いものである。したがって何のためにICTを導入するのか、またそれを用いて何を実現したいのか、どのように運用すればよいか、などについて関係者間で十分に話し合う場を導入作業と並行して持つ必要がある。単なる操作説明会ではなくシステム導入前に「連携が必要な事例」をもとにICTを用いた新しい連携方法について多職種でディスカッションするなどのワークショップを多く開催すべきである。さらにシステム導入後も活用法や課題などについて継続的に話しあう場を作る。このような機会を通して地域の支援者同士が顔の見える関係ができること、実はこれこそがDX/ICTのゴールにほかならない。

【図2】

 

◯響働ICT合同会社

ICTの仕様、ツールの選定、さらには同意書や規約など運用の仕組みづくりだけでも大変だが、加えてワークショップの企画などプロジェクトの立ち上げや会議のファシリテーションなどは専門性と経験が必要でこれらを自治体職員だけで担うことは困難さがある。私が響働ICT合同会社を設立した目的はこれらの専門性と経験の面から自治体職員をサポートすることである。これまで市役所、病院での職員経験をもち全国数カ所でプロジェクト立ち上げを支援してきた。社名の「響働」とは実際にICTをきっかけとして地域の支援者(多職種)が顔の見える関係ができて、単なる「協働」から信頼関係が醸成されてお互いの願いが共鳴し合う「響働」のレベルまで至れた体験を得たことからきている。ICTは道具にすぎないが、しかし良いツールがあることでより緊密で効率的な連携ができるようになることも事実である。