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2026.4.15

地域包括ケアから地域共生社会へ、スマートシティの青写真

守屋 潔

プロフィール

響働ICT合同会社代表。名寄市役所と名寄市立総合病院(北海道)の職員として地域包括ケアICTネットワーク構築運用に携わる。現在は全国の地域連携ICTネットワークの立ち上げ支援を行っている。総務省「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」DXアドバイザー、全国自治体病院DXアドバイザー。

 

要旨

自治体、とくに健康福祉分野では高齢者介護、障害福祉、生活困窮支援、子育て支援、さらには防災まで、個別分野の深化と同時に部署を横断して支える共通の基盤をどう構築するかが課題となっている。本稿では市町村が厚生労働省の進める医療・介護DXの整備を進めながら、並行して地域独自で整備するべきDX/ICTネットワーク(地域ご当地システム)についてどのような青写真を描くべきかを提案したい。

 

1.国のDX(介護情報基盤)

今年度から国のDXが運用開始となる。

【図1】

 

医療機関を対象とした医療DX(電子処方箋、電子カルテデータ共有サービス)と自治体が中心となる介護情報基盤である。

 

【図2】

 

このうち介護情報基盤について考えてみる。私は前職(市役所地域包括ケアシステム担当)のときに市の地域包括ケアシステムを支えるICTネットワーク構築に関わったが、当時は国のDXは存在していなかったため独自でデータを集めてシステムを構築しなければいけなかった。したがって、これからは地域ごとにシステムを開発しなくともこのDXによって容易に介護事業所、医療機関が介護情報を参照できるということの意義と価値の大きさはよく理解できる。介護情報基盤によって自治体の業務負担の軽減につながるだけでなく、データに基づく政策立案や地域包括ケアにおける連携が促進されることが期待できる。また高齢介護部門、介護保険部門だけでなく福祉部門の重層的支援体制整備事業から防災対応力向上にも有用である。重層的支援(多機関協働)において、個人単位から世帯単位の視点をもちえるので世帯全体の支援を設計できるようになるからである。

 

2.ストックとフローの情報

ところで、情報にはストックとフローの2種類がある。ストック情報とは時系列に蓄積されてあとで何度も見直す情報。フロー情報とはリアルタイムで交換・共有、連絡のための情報のことである。医療/介護分野における具体例を図に示す。

【図3】

 

実は国のDX(医療DX、介護情報基盤)はストック情報の集約と共有を目的としたものである。ストック情報の重要性については言うまでもないが、もうひとつのフロー情報の共有も現場においては必要である。この2つは補完関係にあるが、とくに介護福祉現場での支援の質を左右しているのは圧倒的にフロー情報のほうである。利用者(住民)の在宅での様子、「昨日より食事量が減っている」「夜間に不穏が見られる」といった情報が支援者間でタイムリーに共有されるかどうかが、その後の対応を大きく左右する。こうした情報の集約と共有については国のDXの対象外であり、地域独自で仕組みを整備する必要がある。

日本医師会も「国のDXは全国共通規格の高速道路、地域ICTは生活道路」と例えて両方があって機能すると提言しているが、正鵠を得たものである。

 

3.地域で整備するICTは「ご当地システム」

フロー情報共有の仕組みは地域で整備する必要がある。それは関わる職種や固有の課題などは地域によって大きく異なるからである。医療資源、事業者の構成、人口動態、さらには人口集積地域と分散地域などの違いにより必要な連携の形は変わる。また詳細は後述するが在宅医療介護連携事業において医師会に委託して医師会主導でSNS型ツールを導入している地域は多数あるが、稼働状況は芳しくないことが多い。医師主導では地域は動かない。やはり自治体主導で進めなければ介護事業所の参加は見込めないし、重層的支援までを含めた取り組みとすることでより多くの事業所が参加するようになる。さらに平時における地域の支援者同士のネットワークができていると、災害時において要援護者の安否確認、個別避難計画の共有と実施などに極めて有用である。

 

4.ご当地システムを作るには

地域の実情に合わせたフロー情報共有の仕組みづくりは自治体が主体となって進めるべきである。しかし現実には人材と専門性の問題から前に進まないことが多い。ここで重要なことは自治体職員だけで完結させようとせず、外部の専門人材を活用することが効果的な解決策になる。以下、次号において具体策について詳術する。

 

 

図1「全国医療情報プラットフォーム」出展:厚生労働省

図2「介護情報基盤」出展:厚生労働省

図3「ストック情報とフロー情報」